フィオナ・ガーフィールド (Fiona Garfield

著者 スタン・グリフィン DFI国際ろうあ友の会特別寄稿者

訳: 野島泰二
                                                 

 

「何回も何回もオーディションの(落とされる)」経験をしたのちに「(カメラの)前に立てたということはファンタスティック・・・」と口にする、ひとりの耳の不自由なユダヤ系イギリス人女優がいます。この人は、さきごろロンドンのインターナショナル・ホテルで開かれた、初めての聴覚障害者オスカー賞の授賞式で最優秀主演女優賞を受ける栄誉に浴しました。

 

その人はフィオナ・ガーフィールドさん(親しい友人たちは“フィフィ”と愛称で呼んでいます)で、イギリスBBC第2放送の聴覚障害者向けテレビ番組「見て聞いて」のなかの「スイッチ」という連続ドラマに主演しています。フィオナさんはこの番組でご主人と離別し、ひとりっ子の事故死にもめげず健気(けなげ)に生きるフラニーという女性を演じています。この「スイッチ」という番組も最優秀テレビドラマに選ばれました。

 

フィオナさんはいま、36歳。ロンドン郊外のハーロー地区出身ですが、生まれつき重度の聴覚障害者です。母親のリタ・コーテンさんは「この娘のことはとても誇りに思っています。我慢強い性格で、その(難聴)のために引きこもることなどありませんでした」と話しています。フィオナさんはロンドンろうあ劇団のアマチュア劇団員として14年間をすごしたあと、自ら目標とするところに到達したのです。

 

フィオナさんが桧(ひのき)舞台に踊り出たのは2001年のこと、ブリティッシュ・テレビ(BT)の“アドヴァート”(CMのこと)に主役に抜擢(ばってき)されたときでした。フィオナさんの登場するCMBT局の「みんないっしょに」というキャンペーンのひとつで、聴覚障害者のための英国王立機構(IDBDA)や英国ろうあ協会(BDA)との話し合いのなかから生まれました。「私たちは“声なき”対話を易しくて、楽しいものにしようと努めていますが、その一例がこのCMです」とBT局の広報担当者は話しています。

   

この40CMの舞台になっているのは“ごくありきたりの職場”で、登場人物は二人。職場での勤務初日を迎えたハンナという名の女性秘書(フィオナさん)がオフィスのテレビ電話を使っている場面――というよりも、正確にいえば「悪用」している場面です。仕事に電話を使うどころか、在宅の友人と世間話にふけっているわけですから。電話の相手役を演じるのは女優のレイチェル・タガートさん。健聴者ですが、手話のできる女優です。対話の内容はいわゆる“おしゃべり”ですが、通常と異なる点は、その声が聞こえず、二人とも手話を使っているところです。

 

フィオナさんは長期間にわたって、南ロンドン・グリニッジの聴覚障害者だけで仕事をするマルチメディア企業「リマーク」で制作部長をしています。フィオナさんはここではもっぱらカメラの後ろ側で仕事をします。「リマーク」という会社は「インターネットはもちろん、映画やテレビ番組、ビデオ制作などに関連するあらゆる分野の仕事」をしています。このほかにもいろいろな仕事をしていますが、出版物のイギリス式手話への翻訳や、健聴者向けの聴覚障害認識向上トレーニングなども実施しています。

 

フィオナさんは、聴覚障害者はもっと自信をもって最新のテクノロジーを利用すべき、と考えています。職場において聴覚障害認識向上プログラムがもっと普及すれば、「健聴者の側でもいまよりずっと根気よく対応できるようになります」というのが彼女の考えです。